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【働き方の未来図♯2】人事にも「新しい風」。エネルギー開発企業大手INPEXが仕掛ける、大変革を生き抜く人材を生み出すキャリア開発

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【働き方の未来図♯2】人事にも「新しい風」。エネルギー開発企業大手INPEXが仕掛ける、大変革を生き抜く人材を生み出すキャリア開発

会社と社員の“これからの関係性”を考えるシリーズ企画「働き方の未来図」。この企画は、会社と社員の関係が「大人」と「子ども」の主従関係から「大人」と「大人」の関係へとシフトする中、取材記事を通して、これからのキャリア開発を考えていきます。
2回目となる本記事では、「企業側の視点」として、人事の取り組みに注目。社員が「大人」になるための支援、つまりは社員のキャリア自律のために、人事がどんな取り組みをしているのか、リアルな声を拾っていきます。
今回取材させていただいたのは、エネルギー開発企業大手の(株)INPEXで人事に携わる2人。人材マネジメントグループの髙西哲朗さんと竹内基真さんです。INPEXといえば、何十年に一度、あるいはそれ以上の変革期を迎えています。だからこそ社員の自律が重要になる中、どんな人事施策を行っているのでしょうか。また、同社はProfileXT(PXT)を使ったキャリア開発支援も実施。その意義も伺っていきます。
目次

社名変更が表す大変革のとき。だからこそ「社員の自律が求められる」

INPEXはいま、大きな変革のときを迎えています。その変革の凄まじさは、1年前に行った同社の“社名変更”が物語っているでしょう。

2021年4月、これまで「国際石油開発帝石」の名で親しまれてきた同社は、社名をINPEXへと変更しました。長きにわたり、石油・天然ガスを中心としたエネルギー開発事業を営んできた企業が、その「石油」という文字を無くすことに。

この判断の背景にあったのは、多くの人が実感している通り、近年のエネルギーにまつわる変化です。竹内さんがこう説明します。

「環境意識が高まる中で、私たちもネットゼロカーボン社会(※二酸化炭素の排出が実質ゼロの社会)の実現に向けた取り組みを積極的に行うことを表明しています。そのためにはグループ全体の一体感を更に高めて、国内外において統一したグローバルブランドとして展開していくことが重要と考え、主に海外で広く浸透している「INPEX」に和文社名を変更しました。石油という言葉をも脱ぎ捨てて、新しい時代にALL INPEXとしてチャレンジしていくことになったのです」

career development_2-2.jpg(“エネルギーに新しい風”という企業メッセージの背景を紹介する、竹内さん)

 もともと海外では「INPEX」という名で親しまれており、それを正式な和文社名にした形。とはいえ、この社名変更は、経験豊富な既存事業(石油・天然ガス開発)に加え、2050年のネットゼロカーボン社会を展望した新たな事業分野への挑戦を明確に示したといえます。「新卒採用においても、私たちは石油開発の会社ではなく、エネルギー開発の会社であると伝えています」と竹内さん。CMなどで「エネルギーに新しい風」という同社の広告を目にした人もいるのではないでしょうか。

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(出典:INPEX社 WEBサイト)

そんな同社の決意は、今年2月に発表した「長期戦略と中期経営計画 (INPEX Vision @2022)」にも現れています。今後、クリーンエネルギーである「水素・アンモニア」「再エネ」等の事業を拡大し、石油や天然ガスは、2030年頃までにGHG(温室効果ガス)の30%以上低減(2019年比、原単位)といった目標を掲げています。

そのほか、森林保全によるCO2吸収を目的とした事業などにも力を入れていくとのこと。まさに新しい分野への挑戦です。

今回取材にご対応いただいた髙西さんは、ちょうど社名変更のあった昨年4月から人事に携わりました。それまでは、15年以上にわたり、掘削技術者として国内(新潟等)やオーストラリア、UAEで石油・天然ガスの探鉱開発プロジェクトに参加していたといいます。

「海外の現場で働く中で、もちろん脱炭素の流れを肌で感じていました。我々の会社も、いずれ大きく方針を変えるのだろうなと。そして昨年、本社に戻ってきたのですが、中期計画などを見て『会社は本気で振り切るんだ』と感じましたね」

career development_2-4.jpg(INPEXとして変化の時期を迎えていることを語る、高西さん)

とはいえ、いまの方針をどこまで実現できるかは「期待と不安が入り混じっている状態です」と、率直な思いを述べます。

確かに、これほど大きな変革となれば、簡単に実現できるとは限りません。そして、そんな不確定な局面だからこそ「自分で課題を設定して解決できる社員、自律した社員が必要になるのではないでしょうか」と、髙西さんはいいます。

「エネルギー事業の転換を目指すとはいえ、計画通りにすんなり行けるほど簡単なチャレンジではないと思っています。状況は刻一刻と変化するでしょう。その中でいかに柔軟に対応できるか。社員の自律が求められると思うのです」

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30代、40代の社員を対象に、キャリア開発の研修をスタート

髙西さんがいう通り、変革の中で社員に求められるものも変わっていくでしょう。それを意識するかのように、同社の社内制度にも“新しい風”が吹いています。

career development_2-5.jpg(“HR Vision”がオフィスエントランスにも告知されています)

そのひとつが「INPEXチャレンジ制度」。これは社内起業制度のひとつで、エネルギーに限定しない、完全な新規事業領域の事業アイデアを社員から募集し、採用されれば実現に向けて社として取り組むもの。さらに公募制度の拡充や、社内副業も始まり、社員の自律的な働き方を後押しする環境を作り始めています。

人事施策においても、同社ではさまざまな変革を行っています。たとえばこの4月から、幹部社員(管理職含む非組合員)の人事制度を「職務型」へと切り替えます。

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(出典:INPEX社 WEBサイト)

「職務型とは、いわば日本版のジョブ型制度です。幹部社員は特に事業環境の変化を感じており、まずは会社の核となる幹部社員から人事制度を変えていこうと。エネルギー開発事業は、一度プロジェクトに取り組み、生産まで至ると数十年と続く息の長い産業です。言ってみれば、変化に対応してきた経験が決して多くない。そこで、まずは変化に対応できる強い組織を作っていければと」(竹内さん)

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同社の職務型とは、どんなものなのでしょうか。比較として、年功序列型の人事制度を例にとると、年功序列型は年次や期間で役職が与えられ、エスカレーター式と言われることもあります。一方、同社の職務型は、先に各組織のポジションを設定し、そのポジションにふさわしい人材を、能力や適性、経験から選定していく形です。

「最初に人ありきでポジションを与えていくのではなく、ポジションを先に作るので、これまでとは大きく変わると思います」(髙西さん)

まずは幹部社員から始めますが、来年度(2023年)からは一般社員の制度も変更する検討を進めているとのこと。変わりゆく同社の姿を示す一例です。

そしてもうひとつ、2年前からスタートしたのが、30代、40代の社員に向けたキャリア開発の取り組みです。30代向けの「キャリア30」、40代向けの「キャリア40」というプログラム名で行われ、キャリア30では人材アセスメントのPXTを使い、INPEXの中で社員一人一人がどんなキャリアを構築していくか、具体的に将来どう活躍していくかといったことを考えるオンラインのワークショップ研修をスタートしました。

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 (出典:株式会社INPEX)

2年前、この企画の立ち上げに携わったのが竹内さんでした。竹内さんの話によると、プログラムを始めたきっかけは、それ以前に取り組んでいた57~59歳の社員を対象にしたキャリア研修だったようです。

「INPEXでは、60歳以降の経験豊富なシニアの方々の知見を集約し、社内外に発信していくことを目的に設立した(株)INPEXソリューションズという子会社があります。INPEXソリューションズでは、社員一人ひとりがこれまでの経験を活かして自分のアイデアでいろいろな仕事にチャレンジすることを推奨しているのですが、60歳になってから急に『自分のアイデアでチャレンジしてください』といわれても、なかなか難しい。いままでの職場(INPEX)で求められたスタイルとも違います。そこで、その準備段階として50代後半の社員向けにどのように今後の活躍を描いていくかを考えるキャリア研修を始めていました」

しかし、始めてみると「もっと若い年次からキャリアを主体的に考える機会が必要だと感じました」と竹内さん。30代、40代の頃から自律的な働き方を意識したり、リーダーシップを発揮する機会を作らなければいけない。人事の中でそういった考えが強まり、キャリア30、キャリア40という研修が立ち上がったのです。2020年のことでした。

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「現場の社員は、急に『キャリア自律が必要』と言われてもピンとこない」

髙西さんは2021年から人事に異動し、このプログラムの運営に携わりました。その中で彼が大切にしていたことは、「この研修の意義をいかに社員が“腹落ち”した状態で始められるか」ということ。この研修の意義とは、まさしく社員の「キャリア自律」ですが、その必要性を社員が理解した上でプログラムを実施することが重要だと考えていました。

その背景には、現場経験者ならではの髙西さんの感覚があります。

「現場で働いている社員は、急に『キャリア自律が重要』だといわれてもピンとこない人が多いでしょう。私は人事に来て、いろいろな知識を入れる中でキャリア自律の重要性を理解しましたが、現場で毎日働いている人に『キャリア自律しましょう』といっても、その言葉が本当の意味で届くかは未知数ですよね」

同じく、腹落ちの重要性を感じていたのが竹内さん。実は竹内さんも、2年半前に人事に来るまでは、営業職や企画職を歴任してきた身です。その現場の感覚を生かして、社員の腹落ちを生み出す、こんな工夫を取り入れたといいます。

「キャリア30と40を始めた初年度は、外部の方がファシリテーターとなり、アセスメントを使ったワークショップを行いました。しかし、2年目は対象人数の多いキャリア30からではありますが、人事の私たちがファシリテーターを務める形に変更。なぜなら、外部の方から『キャリア自律が必要』と言われるより、同じ会社に身を置き、いま起きている会社の変革を一緒に感じている人間から言われた方が、社員の腹落ち度も変わると思ったからです」

実際の研修では、冒頭で人事から会社の方針が大きく変わりつつあることを伝え、この場を「自律的なキャリア形成を考えるきっかけにしてほしい」と呼びかけたといいます。

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後日、研修を受けた社員のアンケートをみると、ファシリテーションに対する評価はポジティブなものが多数だったとのこと。竹内さんも髙西さんも、この形に一定の手応えを感じています。

そうして、実際の研修では、PXTとワークブックの一体化したコンテンツ「PXTとキャリア開発」を活用。オンラインのワークショップを実施しました。

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(出典:対談を元にHRDグループにて作成)

30代対象の「キャリア30」では、各社員のwill・must・canといった、スキルや適性、意志を考える時間を設け、研修内で行ったPXTのアセスメントでは、論理的思考力などのスキルや、自分の性格要素をスコア化。40代対象の「キャリア40」では、今後の人生に仕事をどう位置付けていくかといった問いをテーマにしたといいます。

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アセスメントは、キャリア開発の一歩目「自己理解」のツール

PXTを使ったキャリア研修を行った上で、髙西さんはアセスメントが社員にもたらすメリットをこう感じたといいます。

「PXTのようなアセスメントは、社員の自己理解を促すツールだと思っています。自己理解ができない人は他者を理解できませんし、会社の中での自分の立ち位置やキャリアを考えるのも難しい。その意味で、キャリア開発の一歩目につながる自己理解のツールではないでしょうか」

髙西さんが口にする「自己理解」の重要性。その根底には「いままでの経験を振り返ると、自分の強みや弱みを自覚できる人の方が伸びると感じる」という考えがあるようです。

「キャリア開発について学んでいると、自分の能力や経験を『棚卸する』という言葉がよく出てきます。PXTは、まさにキャリアの棚卸を手助けするツールですよね。といっても、この評価が絶対的なもの・正しい/正しくないというものではありません。たとえば、ある特性が10段階で1のスコアだったとしても、それでダメということではないですし、この数字がその人そのものを表すわけでもありません。あくまでこの数字をきっかけに、過去を振り返り、自分を理解することが重要です」(髙西さん)

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(出典:対談を元にHRDグループにて作成)

PXTでは、各特性の結果が10段階で表されるとともに、全体出現率の分布が示されます。「母集団の中で自分がどの立ち位置にいるか、そういったデータも自己理解につながる」と髙西さんは付け加えます。

竹内さんも、自己理解の文脈でこのアセスメントのメリットを語ってくれました。

「キャリアを考える上で、PXTのような客観的指標と、周囲の人の主観的な指標、さらに自己認知を合わせてキャリアを考えるのが重要だと思っています。往々にして、自分のことは自分が一番わかっていないことがあります。一方、会社にいるといろいろな人からさまざまなフィードバックを受けて、どれを信じればいいかわからなくなることもあるでしょう。その中で、PXTのような客観的な指標は大切ではないでしょうか」

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会社が変革期にあるときこそ「人材データ」が必要な理由とは

最後に、このキャリア研修を経て、PXTのような「人材データ」が企業にもたらすメリットを2人に質問。竹内さんは「私たちのように、会社や事業が変革期にあるときこそ、こういった客観的な人材データが必要ではないでしょうか」といいます。

「会社や事業が変革するときは、頻繁に組織の形やメンバー構成が変わります。誰をどこに配置するかはきわめて重要でしょう。特に新事業を行う組織は、これまでやったことのない業務に誰が適任かを判断しにくい。そのとき、勘や経験則だけに頼るのではなく、ひとつの判断材料として人材データを適切に使うことが求められると思います」

冒頭で述べた通り、INPEXは今後、職務型という日本版のジョブ型制度へとシフトします。その新人事制度においても、各社員の特性、能力、適性を把握していないと「適切なポジションに適切な人を配置できない」と竹内さん。こういった点でも、人材データが価値を持つでしょう。

さらに髙西さんは、人材データが配置の面でこんなメリットをもたらすと付け加えます。

「たとえばAさんをこの組織に配置したいと思っても、他の組織に行ってしまうことは多々ありますよね。そのとき、Aさんに似た適性、能力のある人を、データを根拠に提案できます」

加えて、こういった人材データは、社員のキャリア開発の動機や道しるべにもなると髙西さんはいいます。なぜなら、自分が目指すべき社員ができたとき、その人がどんな能力、適性を持っているのか、人材データがひとつの参考になるからです。進む方向を決める上でのヒントになります。

この話の流れで、髙西さんは今後やりたいことを口にしました。それは、キャリア自律している社員が「きちんと陽の目を浴びること」。なぜなら、キャリア自律している社員が陽の目を浴びれば、その社員に憧れる社員が増え、結果、自律する社員が多くなるという好循環が起きるからです。

「その意味で、キャリア自律した社員が周りからきちんと認知される仕組みを作りたいですね」(髙西さん)

その“仕組み”として、取材の場の1アイデアで出たのは、やりたいことを見つけ、みずから社内公募で応募し、部署異動が叶った社員は、それを示すマークを社内ツールに表示するなど。そうして、マークのついた人が増え、その人たちが活躍している姿を見ると、他の社員も「自分もキャリアについて考えなければ」という意識が芽生えるかもしれません。

「全ての社員の皆さんが日々それぞれの目標達成に向けて仕事に取り組んでいるため、特定の社員のみをフィーチャーするのは誤解を招くおそれもあるのではと感じつつ、ロールモデルとなりうる社員を取り上げてポジティブな『風』を組織に送り込みたい思いもあり、自分のなかで葛藤しています(笑)。いずれにしても、フェアな制度づくりと個々人を活かす運用面との良いバランスはしっかりと考えていきたいですね」(高西さん)

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変革の中で、INPEXが仕掛けるキャリア開発の取り組み。人事が巻き起こす“新しい風”は、働き方の未来図を考える上で大切なメッセージとなりそうです。

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