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雇用の未来予測とリスキリング ~変化する人材マネジメントと個のキャリアを考える~『HRD Next 2021-2022 PROGRAM1 Day1』

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雇用の未来予測とリスキリング ~変化する人材マネジメントと個のキャリアを考える~『HRD Next 2021-2022 PROGRAM1 Day1』

2025年には人とロボットが費やす労働時間が等しくなるといわれるなか、企業側が従業員に求めるビジネス要求は大きく変化していく見通しです。そこで、人材マネジメントにおいて重要なテーマとなる個人のスキルの再獲得(Reskilling)について、経営者育成をはじめとする組織・人材開発のトップベンダーである株式会社セルムの代表取締役社長 加島禎二氏を招き、日本を代表する企業から寄せられる人事課題の実態や、これからのあるべき人事ビジョンを語っていただきました。

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雇用の未来予測 ~いま、世界で起きている変化と日本企業の現状とこれから~


企業経営者は「スキル取得」や「再配置」を意識

まず、福島が様々な世界的経済団体や調査機関の未来予測を紹介し、今後の雇用環境を読み解きました。

例えば、世界経済フォーラムは、「2025年までに人とロボットの労働量は等しくなる」と予測し、2030年までに世界の10億人のリスキルを目標に設定しています。また日本の経団連は、新成長戦略として、企業のDX推進に伴いデジタル技術を中心としたリスキリングの必要性に言及しています。総じて、企業の存続には従業員のリスキリングが重要なテーマとなっていることが示されているのです。
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日本においては、就業者数が減少する一方で医療・福祉従事者が増加しています。したがって、ロボット等のテクノロジーによる代替や高齢者の就業、リスキルによる新たな労働力の確保が求められます。
コロナ禍により、世界の企業経営者の意識が高まった最たる領域としても、「スキル取得」や「再配置」であるとの調査結果が示されました。リスキリングの効果として、生産性向上と従業員の士気の向上があることも伝えられています。

大胆な海外企業の経営判断

企業の取り組み事例として、Amazon社による倉庫作業員からソフトウェアエンジニアへのリスキル施策や、マイクロソフトによる全世界の失業者2500万人への無料リスキリングプログラムなどが紹介しました。さらに、AT&Tの2000年頃からのリスキリング成功事例を紹介。スマホ市場拡大や通信高速化などの技術革新による経営環境変化の中、ハードウェアからソフトウェアへのリスキリングが求められ、10億ドルの投資を決定。ジョブとポストの明確化などの自発を促す施策を講じ、結果的に2020年において技術者の81%が社内異動で充足するといった効果を生んでいます

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株式会社セルム 代表取締役社長 加島禎二氏 

ここまでの話を受けて、加島氏は「海外企業の経営判断は、手厚い投資など、日本企業より大胆に行われていると思います。また、環境変化を個人のリスキルに落とし込むという難しい施策をやり切る人材マネジメントは、海外企業が先んじていると考えます。一方、日本企業にも昔からリスキルに取り組む企業があり、JR東日本様が駅ナカビジネスを始めた際のリスキルといった事例もありました。でも、欧米企業のような大胆な投資をしてリスキルに取り組んだ日本企業はまだないと思います」と話しました。

ここで、福島は最初の問い「日本企業がこれから迫りくる変化にどう立ち向かい、人材投資をしていく上で考えなければならないこととは?」を挙げ、これに答える形で、加島氏のプレゼンテーションが開始されました。

“チェンジマネジメント”から“トランスフォーメーション”へ

加島氏は、まず「日本企業の人材育成投資はグローバルスタンダードに比べて劣後している」ことを示し、その理由として、「日本企業には“OJT信仰”がある一方、海外企業では上司は部下のパフォーマンスをマネジメントすることに主眼が置かれ、中長期的視点での部下の育成は会社が投資して行う領域という考え方があります」と説明しました。また、高まりを見せるESG投資の対象として、企業の人的資源の有効活用や人材育成への関心が強まっていることにも触れました。

そして、加島氏は「今、多くの大手企業が、M&Aなどで外形的に会社の形を変える“チェンジマネジメント”ではなく、会社の内部を変える質的変容の“トランスフォーメーション”が求められる経営の転換期にあります」と述べました。例として、日立製作所様の社長の「今後は(M&Aではなく)自分の力で成長することが必要となります」とのコメントや、AGC様の「素材の会社」へのトランスフォーメーションを目的としたカルチャーの再構築について、取り上げて説明しました。

「世界観」「コアコンピタンス」「変化への適応力」

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出典:株式会社セルム

加島氏は人材育成投資を加速させる上で肝要な3つのことをピラミッド構造図で説明しました。一番上には「世界はもっとこうしたらよりよくなるはず」という「世界観」、つまり“パーパス”があります。真ん中には組織の強みを価値に変える能力の「コアコンピタンス」があり、「コアコンピタンスがあるからこそ、リスキリングは成功する」ことになります。そして、一番下には「変化への適応力」があります。加島氏は「これからのリスキリングはDXのように一時期に行うのではなく、変化に対応して常に行われるべきです」と指摘しました。加島氏は「人材育成投資の上で重要なのは、組織能力をきちんと見極めることです」とまとめ、こうした組織能力の開発を続けてきた企業として、ソニー様やリクルート様、トヨタ様の例を紹介しました。


以上を受け、福島は「単にスキルをつけるのではなく、企業の世界観の実現のためのコアコンピタンスに基づくリスキルということが意識されることで、会社へのエンゲージメントにも繋がる」との所感を述べました。加島氏は「これからジョブ型が主流になっていくと、環境が変わったらリスキリングすればうまくいくと思われがちですが、そんな単純な話ではないのです」と指摘します。顧客に価値を提供し社会に貢献し続けるという大きな目的に繋げなければ、リスキリングの意味は薄れるということです。福島は、「M&A後の組織の融和の重要性がよく言われるが、組織能力をどう高めるかが重要との加島氏の指摘は印象的」と述べました。

ここで視聴者から「海外企業は人材が流動化しているが、なぜ莫大な人材投資ができるのか」との質問を受けました。加島氏は「流動化しているので教育機会が増えていることと、大きな人材投資をしていなければ人材市場において優秀な人材を惹きつけ獲得することができないことからです」と回答しました。

本対談の全内容をご覧いただきたい方はこちら

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リスキリング これからの時代に求められるスキルとは?

「社会的・感情的スキル」が重要視

まず福島は、米国の職業情報サイト「O-NET」においてどのようなビジネススキルが高い付加価値に繋がるかの調査結果を紹介しました。これによると、給与水準とスキルの関係においては、技術的スキル、社会的・感情的スキル、高度な認知スキルの重要性が判明します。

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 そして、これら3つのスキルの中で企業が優先的にリスキリングに取り組んでいる細分化されたスキルとして、「リーダーシップ&マネジメントスキル」や「基本的なデジタルスキル」などがあることが紹介されました。中でも「対人対応スキルと共感力」といった社会的・感情的スキルが重要視されている点について、加島氏は「多様な人と仕事をしていく中、一緒に苦難を乗り越えていく“人間力”として、社会的・感情的スキルが最重要なのです」と説明しました。「社会的・感情的スキルがなければオペレーショナルな仕事にしか就けず、いずれ機械に代替されるでしょう」とコメントします。「人をやる気にして動かし、組織力を高めるという企業運営の源泉となるスキルだと思う」と福島は述べました。

ここで福島は、HRDグループが提供したアセスメントを用いた小売企業のリーダー育成事例を紹介します。コロナ禍で一時的に閉店せざるを得なかったその機会を利用し、360度サーベイ、「CheckPoint360°」によるリーダーとしての自己認知向上、組織力強化のためのアセスメントツール「Everything DiSCマネジメント」を用いた対人対応スキル向上研修を行い、1年後の2回目の360度サーベイを行った。その結果、対人対応力が向上し、業績アップにも繋がったのです。
アセスメントツールは、①他者の視点を認識、②自分の動機や欲求を知る、③行動変容の加速、をもたらし、成長のスピードアップとビジネス成果に結実することを説明しました。

“正解”がない故の共感力の重要性

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次に、加島氏が対人対応スキルの重要性について、「共感力というスキルに特に注目しています」と話しました。よく言われる「課題解決」は、通常は情報収集・分析により課題を設定します。一定の情報に基づけば、誰が行っても同様の課題設定や解決策が“正解”として論理的に導き出されます。しかし、現代社会においては、“正解”がない場合が多く、自らの意思で判断するしかありません。「こうした場合、最初に情報収集から入っても難しく、共感から入るべきです」「ああしたい、こうありたい、という自分の意思からスタートすることが共感力のポイント」と加島氏は話しました。

そこから課題を設定すると、人によって課題が変わります。「こうしたデザインシンキングの発想の仕方がこれから求められるでしょう」と加島氏は指摘しました。「VUCAの時代、何を課題とするかはエモーショナルなところから決まる。それがムーブメントに繋がる」と福島は所感を述べました。「リーダーシップも『この指止まれ』に共感した人の集まりに対して発揮されるものなのです」と加島氏は応じました。

“アンラーン”で自らを変質

では、共感力や変化対応力はどう身につければいいのでしょうか。加島氏は“アンラーン(Unlearn)”のプロセスを説明しました。既成概念や成功体験を、満杯のコップの水をこぼすように意識的に捨て、できた余白に新たな知を取り入れ、全体的に変質させるというものです。「チェンジしろ、と言われると自己否定をしなければならないので変われないのです。自ら捨てることが大事。但し、全部捨てると自分ではなくなるので、一部だけを捨てることが重要です」と加島氏は話します。

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出典:株式会社セルム

「課長や部長は、新入社員が配属されたらコップの水を少し捨てて新人と話をし、新しい考え方を取り入れるべき」と話す加島氏。そういった常に自分の水を変質させようとするリーダーがいれば、常に学習し続けるリスキリング組織になると説明しました。

“コンフォートゾーン”と“ストレッチゾーン”

また、“コンフォートゾーン”と“ストレッチゾーン”について説明がありました。未知のものに出会い、適応や対処が求められるストレッチゾーンに時々身を置くことが成長に繋がるとの見解を示しました。
「ジョブ型のプロフェッショナルとは、同じ仕事を続けて生産性を上げる人を言うのではありません。プロとは高い成果を出す人のこと。常にストレッチゾーンで自分を磨こうという気構えがなければなりません」と加島氏は話します。「一見無関係のことも取り入れて統合してみるといったことも必要かと思う」と福島は述べました。

ここで福島は、加島氏に「リーダーが一皮むける瞬間」について尋ねました。加島氏は「人間は感化されるものです。リーダーはリーダーによって育成されます。リスペクトするリーダーに認められようと努力するからであり、会社の中だけでなく外にもそんなメンターやロールモデルを見つけることが大事です。そんな人材が集まった“ステルスネットワーク”が企業を強くします」と答えました。

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個人のキャリア構築と企業が取るべき戦略とは


“人生100年時代”におけるキャリア

福島は、“人生100年時代”と言われる中で変化する個人のキャリアについて話しました。従来は「教育」「仕事」「引退」というライフステージがあったが、人生100年時代は個人の状況に応じてそれぞれのタイミングで様々なキャリアのステージを行き来するようになります。そうした中では、「教育」、「多様な働き方」、人的ネットワークやポータブルスキルなどの「無形資産」が重要になり、個人の働く意識と企業との関係性も、従来の“企業内での自らの価値向上”から“市場における自らの価値向上”に変化します。

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企業と個人の相互の視点から目指すべき姿としては、企業側は戦略に基づくスキルの可視化や習得機会の提供、キャリアパスの提示であり、個人側は自律的な働き方や新たなスキルの習得、働きがいの実現といった双方の変革を挙げました。この“可視化”や“マッチング”において、人材アセスメント「ProfileXT」の活用が有効です。市場環境変化に応じてビジネスニーズに適合した職務像をモデリングし、個人のキャリア開発と組織としての適材配置の両輪を回すというものです。このアセスメントにより、自己の内発的動機や適性を捉え、キャリア開発に繋げることができます。(参考:キャリア開発とPXTに関する記事はこちら

ここで福島は、加島氏に「企業が優秀な人材をエンゲージしつづけるために、何をすればいいのでしょうか? キャリア開発の機会をどれだけ与えられるのでしょうか?」と質問しました。加島氏は「社員一人ひとりを“見える化”し、会社全体の理屈で適材適所を実現する人材マネジメントを行なうことで、社員と経営が“Win-Win”の関係になることが大切です」と答えました。

続いて、加島氏は、エンゲージ策として、3つのことを取り上げました。

従業員への3つのエンゲージ策

1つめは「ファストトラックを設ける」。非連続の経験を与えられながら一般的なトラックよりも5~10歳早く昇進するコースで、それだけ給与も早く上がります。これは海外企業では当たり前に実施されている施策です。採用も、このプログラムを前提に行うので、優秀な人材を獲得できます。「パフォーマンスの状況によって一般的なトラックへの転入出を行う日本企業もあります」と話す加島氏。「リーダーを育成するなら、ここまでしっかり振り切るべきかもしれない」と福島は応じました。

2つめは「キャリア開発の考え方をアップデートする」。加島氏は「キャリアとは“職種”や“ポジション”ではなく、その人が人生で得てきた資産全体を指します」と言いました。キャリアを重ねることで、関わる人から“信頼”や“評判”が得られます。その“信頼”と“評判”が“チャンス”につながり、そのチャンスをものにすることでキャリアがよりリッチなものになります。「つまり“キャリア資産”という考え方が大事」と話す加島氏。その資産は、資格や知識などの「学習資産」、人脈や実績などの「実践資産」、胆力や自律などの「内省資産」に分かれます。「こうした資産を社員が貯めている会社は強い」と加島氏は指摘します。「“キャリアは資産”と考えると、今のアンハッピーな状況も一つの財産に思える」と福島は応じました。

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出典:株式会社セルム

3つめは「アルムナイリレーションを活かす」。アルムナイリレーションとは、転職などで会社を去った“卒業生”のネットワークを指します。「特に新卒で入社した会社には愛着があるものです。転職後に関係がプツッと切れるのはもったいない」と話す加島氏。「関係を維持して協業や副業、オープンイノベーション、ファン(顧客)化などに繋げるべきです」と述べました。

最後に、「2.5万人をスタートアップにする」との組織開発目標を掲げ、組織イノベーションを行ったシンガポールのDBS銀行様のケースを、日本企業のロールモデルとして取り挙げました。「改革を全社員が楽しんで行っているのだと思います。つまり、企業文化ができています。こうなると他社は真似できないのです」と加島氏は話します。「ビジョンからの統合したピクチャーとして考えなければならないことがわかる」と福島は応じました。


全体の総括

世界で起きている潮流から「リスキリング」を捉えると、デジタル化、リモート化によるビジネスの変化が急加速する中で企業がサステイナブルに価値を提供し続けるための経営戦略の位置づけとして捉えるべきものであることが分かります。これを実現する上で日本企業においては自力で内部を変革していく質的変容、“トランスフォーメーション“が鍵となり、リスキリングを戦略に沿えるためにも、経営者のリーダーシップを基にした組織作りが肝要です。個においては、付加価値の高い3つのスキルを軸としたリスキリングで自身の市場価値を高めながら、これまでとは異なる会社との関係性の中で自分自身のキャリアを自律的にデザインしていくようなキャリア観の変革が求められていくでしょう。企業はそのような個をエンゲージし、選ばれる存在となるために、世界観、コアコンピタンス、組織力向上のための取り組みがますまず重要なカギとなってくると考えられます。

本対談の全内容をご覧いただきたい方はこちら

★ゲストスピーカーのご紹介★

株式会社セルム 代表取締役CEO
加島 禎二氏
Teiji Kashima

1990年に上智大学心理学科を卒業後、リクルート映像に入社。
営業、コンサルティング、研修講師を経験。1998年セルムに入社。
企画本部長、関西支社長を経て2010年代表取締役社長に就任(現職)。
CELM ASIA取締役、升励銘企業管理諮詢(上海)有限公司総経理を歴任。
一貫して「理念と戦略に同期した人材開発」を提唱し、20年余に亘って、次期経営リーダー開発、人材開発体系の構築、グローバル人材育成、理念浸透、組織カルチャー改革などに携わる。顧客のプロジェクトの最前線に立ちつつ、優れた経営と強い事業に貢献する組織人材開発のあり方について、積極的に発信を続けている。

株式会社セルム
https://www.celm.co.jp/

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