HOME >  イベント  >  マイクロソフトはいかにしてカルチャー改革を実現したか ~新しい時代における組織・人材戦略を先駆者と共に考える~『HRD Next 2021-2022 PROGRAM1 Day3』

メディア

マイクロソフトはいかにしてカルチャー改革を実現したか ~新しい時代における組織・人材戦略を先駆者と共に考える~『HRD Next 2021-2022 PROGRAM1 Day3』

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
マイクロソフトはいかにしてカルチャー改革を実現したか ~新しい時代における組織・人材戦略を先駆者と共に考える~『HRD Next 2021-2022 PROGRAM1 Day3』

環境変化が更に加速する2020年代。企業が直面する変化の第一は、テクノロジーの進化があります。そこで、このセッションではデジタル・テクノロジー企業の雄であるGAFAMのそれぞれの人事戦略から、人材を活かすマネジメントを掘り下げました。優秀な人材をいかに惹きつけて、育てているのかについての共通事項を考察。特に、マイクロソフト社の人材マネジメントについて、ゲストスピーカーによる同社の最新人事施策の紹介と考察から、これからの日系企業における人事戦略の方向性についての議論を行いました。

セッション動画はこちら


目次

1. GAFAMのビジネスモデルと人事戦略


必要なスキルの変化

まず、水谷が企業におけるマクロ環境やデジタル化、サスティナビリティ、働き手におけるライフシフトやキャリア観の多様化、必要なスキルの変化といった環境変化を概観。「双方に大きな影響を与えているのは、デジタルの進化」と整理しました。

この流れで、2000年と2020年の時価総額ランキングを比較。2000年に1位であったゼネラル・エレクトリック(GE)は100位未満となり、GAFAMがベスト10に顔を揃えていることが紹介されました。GAFAMのビジネス内容を整理し、サービス領域は異なるものの、“プラットフォームビジネス”“生活に浸透”“ビッグデータ”という共通点があることが説明されました。

次に、視点を変えて働き手に求められるスキルに言及し、Day1でも紹介された「高度な認知スキル」「社会的・感情的スキル」「技術的スキル」の重要性を再確認。「デジタルスキルとともに、これら3スキルの需要が高まっています」と話しました。加えて、GAFAMにおけるリスキル投資を説明。Microsoftの失業者2,500万人への無料プログラム提供や、日本マイクロソフトにおける人材育成施策などが紹介されました。


GAFAM同士の学び

ここで、水谷は堀江氏に「マイクロソフト社における日本市場の位置づけは?」「GAFAM同士で学びあう、というケースはありますか?」と質問。

1つめについて、堀江氏は「Microsoftにとって日本は大きな戦略的マーケット」と前置きした上で、決算期である7月にオンライン行われた全社イベントのエピソードに触れ、「CFOのプレゼンテーションには何か所も日本マイクロソフトの名前が出てきて、そのパフォーマンスの高さが協調されました」と紹介しました。

2つめについては、Microsoftグローバルの全マネージャーに向けたトレーニングで、Googleによって広められた「心理的安全性」がテーマに取り上げられたことが話されました。

次に堀江氏は、GAFAMにORACLEを加えた6社のカルチャーの風刺画を示し、Microsoftは事業部門がサイロ化し、それぞれがピストルを向け合っている様を紹介。「昔のこういうカルチャーは良くないと認識し、カルチャーを変えてビジネスの成長に繋げてきました」と話しました。

2021_Day3_1.jpg

出典:日本マイクロソフト株式会社

ここで水谷は、マイクロソフト社に注目する理由として「歴史がある」「苦難の克服」「(組織人事については)知られていない」と説明。堀江氏のプレゼンテーションに繋げました。

2021_Day3_2.jpg

当日の動画はこちらです。

2. Microsoft社の人事戦略

 堀江氏は、まず新入社員向けにMicrosoftの歴史やビジョンを2分弱にまとめた動画を紹介。次に、ピーター・ドラッカーの「文化は戦略に勝る」という言葉を引いてMicrosoftのカルチャー変革を解説した「再起動するマイクロソフト」の題された新聞記事にも触れました。

そして、堀江氏は「企業文化について学んだ10のこと」についての説明を始めました。

2021_Day3_3.jpg

出典:日本マイクロソフト株式会社

①「過去を尊重して未来を定義する」
自社には大切にしている「慈善の精神」「よりよい社会のためのテクノロジー」「大胆な志」という過去からの良いカルチャーが息づいていることを紹介。一方で、先の風刺画を再掲し、「革新的な仕事がお役所的な仕事に、共同作業が内部抗争に変わり、共創から落後し始めた」過去も認め、現CEOによるカルチャー変革に繋がったことが話されました。

では、どう変わったのか。堀江氏は「“何でも知っている”から“何でも学ぶ” へ」という変革内容を説明。これをさらに深堀すると、“Fixed Mindset”(固定的)から“Growth Mindset”(成長的/発展的)への変革であることが解説されました。


2021_Day3_4.jpg

出典:日本マイクロソフト株式会社

②「絞り込む:シンプルかつ戦略的に」
「大事なことは、シンプルかつ戦略的に絞り込まなければ変革は起こしにくい」と堀江氏。その方法について、専門家を交えたリサーチや「Culture cabinet」といった幅広く声を集めた施策が紹介されました。ここで堀江氏は現在のカルチャーについて言及。“Growth Mindset”の下に、「常にお客様を第一に考える」「ダイバーシティ&インクルージョン」「ワン・マイクロソフト」があり、さらに「大きな成果を生み出す」に繋がっていると説明されました。

ここで、サティア・ナデラCEOが株主総会においてカルチャーについて語っている動画を紹介。3つめの話に移りました。

③「ごまかしはきかない」
トップ自らがカルチャー変革のロールモデルとなって率先し、全ステークホルダーに向けてコミットし、行動することが大事であるということです。

④「目的志向型のミッションを持つ」
堀江氏は、原文の“purpose-driven”の日本語訳である“目的志向型”は、「“会社の存在意義”という意味に捉えている」と前置きし、「この会社は何のために存在しているのかという目的意識を持つことが非常に大事」と話しました。同社の創業時のミッションは「すべてのデスクと、すべての家庭に1台のコンピュータを」というもの。そこから現在は「地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする」と変わっていることを紹介し、「私たちはこの使命感のもとに毎日ワクワク仕事をしています」と話しました。

2021_Day3_8.jpg


日本マイクロソフト株式会社 人事本部 HRコンサルティンググループマネージャー 堀江 絢氏


⑤「大小さまざまな象徴的変化を起こす」
人事制度としてのパフォーマンスレビューのやり方を、互いの足を引っ張り合うことに繋がる相対評価から、「チームワークを通じて様々な成果を出す」といった項目における絶対評価へ一変させたことが説明されました。「こうしたシンボリックな施策だけでなく、社員食堂のコーヒーの紙コップには新たなカルチャーが印刷されているなど、小さな施策も含めて多面的に学び続ける環境づくりに取り組んでいます」と堀江氏は話しました。

ここで堀江氏は、“Growth Mindset”の下に続く「バリュー」を構成している「敬意」「誠実」「アカウンタビリティー」の3項目、「マネージャーに求められること」を構成している「モデルとなる」「コーチする」「ケアする」の3項目、「リーダーシップ原則」を構成している「明確にする」「活力を生み出す」「成功を実現する」の3項目について触れました。

2021_Day3_5.jpg

出典:日本マイクロソフト株式会社

⑥「文化を全員に定着させる」
カルチャーは抽象的な話にとどめるのではなく具体的なストーリーとして語ることの重要性が説明され、同社では毎週のリーダーミーティングで1つのケースが共有されていることなどが紹介されました。「カルチャーのモデルになった人を称えるアワードが設けられましたが、中には“リスクテイカー”という失敗した人も称えるアワードまで登場しました」と堀江氏。

⑦「コミュニケーション、コミュニケーション、コミュニケーション」
これほど大規模なカルチャー変革は、浸透するまでに時間がかかるもの。「あらゆる場面でコミュニケーションをとって伝えることが大事で、実際に毎日のようにミーティングなどでカルチャーやミッションの話を聞いています」と堀江氏は話しました。なお、同社では毎年「Microsoft Diversity & Inclusion Report」を発表していることも紹介されました。


⑧「テクノロジーを活用して変化を加速する」
テクノロジー活用方法として、日々の様々な記録や全社員に対する年1回のエンゲージメント調査などの“Keep score”、データを活用して思い込みをなくし、インサイトを得る“Myths and insights”、自社製品である“Microsoft Teams”を活用しての“Collaborate and learn”、全社プラットフォームを用いて大規模に繋がる“Connect at scale”について説明されました。

⑨「全員が漕ぎ手」
会社がカルチャーを掲げても、一人ひとりの社員が実践しなければ無意味。同社では、カルチャーフィットしていないメンバーは、退職することが一つのオプションとなっていることに改めて触れられました。

⑩「常に謙虚で、常に向かうべき道を歩む」
「Microsoftのカルチャー変革は成功し時価総額ランキングは1位になりましたが、それで終わりではありません。常に謙虚にカルチャー変革のジャーニー歩むことを意識して仕事に取り組んでいます」と堀江氏はまとめました。


当日の動画はこちらです

《目次へ戻る》

3. 対談セッション


トップが言うカルチャーは嘘ではない

以上を受け、水谷は「変化を好まない人が多い中、Microsoftさんは内部のパワーで変革に取り組んできたことが印象的」とコメントした上で、堀江氏に「入社して一番驚いたことは?」と質問。堀江氏は、「トップが言っているカルチャーが嘘ではないということ」と答えました。トップは自ら話したとおりに行動し、社員も一人ひとり実践していると言います。「それが一番の驚きでした」と堀江氏。アジアやオセアニア諸国のグループメンバーと同じワークショップに加わっている堀江氏は、「(自分のように)新しく加わった人は皆同じ感想」と話し、具体例としてDiversity & Inclusionにおいては目の不自由な人向けに製品が開発されていることに触れました。「社員は誇りをもって仕事ができていると思います」と堀江氏は言います。

「当たり前と言えるかもしれませんが、それをこの規模でやり切っているところは素晴らしい」と水谷。その推進策としての「マネージャーに求められること」を引き合いに、マネジメント層の底上げに悩む日本企業が多いと指摘して、堀江氏に解決へのヒントを求めました。

2021_Day3_9.jpg


人事データの徹底活用

堀江氏は、社員になって驚いたことの2つめとして、人事データの徹底活用を挙げました。エンゲージメント調査ではマネージャーに関する質問があり、その結果がマネージャーの評価スコアとなっていることに言及。さらに、調査結果をもとに各マネージャーが改善へのアクションプランを立て、どう実践されているかを1年間トラッキングしていくことが説明されました。

主役はあくまでも各ビジネス部門であり、人事はそのサポート役であることが確認された上で、堀江氏は「改善のために一般社員が自由にコラボレーションすることが期待されています」と話しました。

水谷は、「そういった環境の中でマネージャーが自らを振り返り、リーダーシップがどう発揮できているかを見直す流れができているのですね」と問い直しました。堀江氏は、「人事考課のサイクルの中に入っているので、マネージャーは大変だと思います」と返しました。

水谷はさらに、他企業に参考になることとして意識的に取っている人事データの存在について問うと、堀江氏は「1時間は話せるほど数えきれないくらいあります」と回答。一例として、コロナ禍下における在宅勤務体制となって以降のワークスタイルについてのデータを紹介し、このデータをもとにどのようにオフィスワークとのハイブリッド体制に持っていくかを検討しすでにスタートしていることが話されました。

これを受けて水谷は、自社でもMicrosoft Teamsで誰が誰とコラボレーションしているかを記録する機能を活用していることに触れるとともに、同社製品のセキュアさによるメリットにも言及。「Teamsを導入したことで働き方を変えることができました」とコメントしました。


360度サーベイを活用した組織活性化

次に水谷は、NETFLIXの有名な「カルチャー・デック」を取り上げました。NETFLIXの幹部が「(前向きな意図を持って)本音を語る」カルチャーの重要性に気づき、これを360度評価によって定着させることで、社内の駆け引きが減り、スピード感を高めることに成功し、結果的に優秀な社員が集まって現在の地位を築いたケースとして紹介。ここから、HRDの360度サーベイを活用した組織活性化の話に移りました。

2021_Day3_6.jpg

「あるユーザー企業の事業トップが『必ずしもマネジメントが常に正しいわけではなく、自由闊達に意見交換をしていくことが重要』と360度評価を取り入れると、率直なフィードバックを行うカルチャーが構築され、メンバーがそこに書き込むコメントの質が変化したそうです」と水谷は導入事例を紹介。続いて水谷は、拡張分析による360度サーベイの要因分析に触れました。「これによって、18個設定されているスキルセットのうち、“効率よく仕事をする”と“成果創出”という組み合わせがハイパフォーマンスに最も影響を与えているといったことがわかります」と説明しました。


「挑戦し続ける」「自己認識を高める」ことが大切

ここで水谷は、「HR領域のキャリアを歩むうえで、堀江さんが大切にしていることを教えてください」と質問。堀江氏は、「いろいろありますが、やはり“Growth Mindset”。常に失敗を恐れずに挑戦し続けることです」と回答しました。人間はすべてのことにGrowth Mindsetではいられないものの、自分のパーパスは何で、強みは何かを把握し、そこにおいてはGrowth Mindsetでチャレンジすることで、成果を上げることに繋がるということです。もう一つ、堀江氏は「自己認識を高めること」を補足。リーダーシップ開発の第一歩は自己認識であり、前職のHRDグループ在籍時にDiSCやProfileXTなどの人材アセスメントツールによって自己認識できたことがターニングポイントになったと話しました。

《目次へ戻る》

1. Q&A

 ここで、水谷は本セッション視聴者からの質問を受け、まずは「堀江さんは社内の情報をたくさん話されて意外でしたが、こういった外部への発信力が採用力にも繋がっているのでしょうか?」との質問に「もちろんで、私たちのカルチャーに共感する人に入社してほしいので、こういったカルチャーの話を社員がいろいろな機会で発信することは採用力アップに繋がると思います」と回答。

次の「カルチャーに合わない人にどう認識してもらい、行動を変えてもらっているのか。退職という出口に繋げているのか?」との質問には、「“Growth Mindset”というカルチャーが出来上がっているので、“Fixed Mindset”の人がいれば周囲の人はすぐわかるはずですし、本人が辛いと思います。お互いにハッピーではありません。そういう人に対しては、時には(退職に持っていくことを)決断しなければならないと人事としては考えています」とコメント。水谷は、採用時にどのように確認しているかを尋ね、堀江氏は「面接時にカルチャーに関する質問をして、フィットしているかを見極めています」と回答しました。

次に、「会社が提供している研修と、現場の指導をどのように組み合わせていますか。また、どんなプログラムやメニューがあるのですか?」との質問に、「基本的な考え方として、大規模な企業ということもあり、オンボーディングは長いジャーニーと捉えています。日本マイクロソフトの場合、人事が提供するのは最初の3日間だけで、現場でのロールや組織特性に応じたトレーニングが少なくとも半年くらいは続きます。マネージャーの場合はグローバル共通の三十数時間に及ぶプログラムや、コーチライクになってもらうためのコーチングトレーニングなどが行われています」と回答しました。

最後に、水谷は本日の「GAFAMの戦略に学ぶ」というセッションを整理。ビジョンやミッションへの投資を行うとともに、アナログ的な参入障壁へも投資を行っていることを説明しました。そして、GEの経営失速やフォルクスワーゲンの排ガス不正といった失敗を取り上げ、歴史から学ぶ意義に言及し、「未来への視点を欠く」「好ましいカルチャー形成を怠ることのリスク」を伝え、本セッションを終えました。


当日の動画はこちらです


★ゲストスピーカーの紹介★

日本マイクロソフト株式会社 人事本部
HRコンサルティンググループ マネージャー
堀江 絢 
June Horie

2009年家族と来日、専業主婦、大学職員、人材アセスメント会社のコンサルタントを経て、大手グローバルスポーツメーカーに転職、主に組織開発、人材育成とタレントマネジメントの業務を担当。2020年2月に日本マイクロソフトに入社、中途新入社員のオンボーディング、新卒社員研修、マネージャー能力開発などのプログラムをリードしながら、社員とマネージャーにコンサルティングとコーチングを提供する。

《TOPへ戻る》

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加