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流動性組織:未来の企業競争力は「流動性」が決する『HRD Next 2021-2022 PROGRAM3 Day2_Session1』

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流動性組織:未来の企業競争力は「流動性」が決する『HRD Next 2021-2022 PROGRAM3 Day2_Session1』

変化への耐性は組織のリキッド化(流動性・柔軟性の高さ)によってもたらされるという長年の学術研究の成果を解説します。さらに、研究成果に加えて、数々のFortune500企業のトップマネジメントに対するコンサルティングの実践経験も踏まえて、日本企業に必要な改革の処方箋を提示します。

セッション動画はこちら

登壇者:
マイアミ大学ハーバートビジネススクール副学長、マーケティング学部長
アルーン・シャーマ教授

モデレーター:
HRDグループ・プロファイルズ株式会社
取締役
韮原 祐介

目次

ディスラプションへの備えとしての流動性

ディスラプションを防ぐ流動性

まず、韮原が本プログラムのDay1を振り返り、「事業環境の不確実性が高まる中、企業のミッション、ビジョン、バリューに基づき、組織や人材をいかに素早く市場環境に適応させていけるかが問われる中、登壇各社におけるEverything DiSCやProfile XT、CheckPoint360°の活用事例などを聞くことができました」と概括した上で、不確実性の高い経営環境に対応するための「流動性組織(Liquid Organization)」の研究で知られる本セッションの登壇者、アルーン・シャーマ教授を紹介しました。

次に、シャーマ教授はプレゼンテーションの前に背景を説明。企業間および国家間競争に興味を持つ中、2018年頃からディスラプション(破壊)の問題が深刻化。複数の国家や企業の関係者から要請を受け、1年ほどを費やしてディスラプションの類型を提示したと言います。「すると、そうしたディスラプションを防ぐ方法を問われ、本日のテーマである“流動性(Liquidity)“の概念に到達しました」と述べました。「流動性」は国家と企業の双方に通用する概念ですが、本セッションでは企業について扱います。

ここからシャーマ教授はプレゼンテーションに入りました。

まず、研究方法として数多くのCEOやCFO,業界の専門家などと調査研究を行ってきたことに触れ、「現在はグローバルな医療機器会社とディスラプションへの対処法について議論しています」とコメント。また、これまで15回来日し、大企業だけでなく中小企業にも訪問したと言います。

組織における速度、柔軟性、加速(と減速)と両利き

本題に入り、流動性組織とは何かについて「流動性とは、組織における速度、柔軟性、加速(と減速)、そして両利きのことを指します」と説明。どれだけ速く製品を開発できるか。どれだけ素早く方向転換できるか。そして、速度と柔軟性の違いについて、一つの例を示しました。

14年前、携帯電話市場は14%のシェアを持つノキアが支配。2番目はサムスン、3番目はブラックベリーでした。現在はサムスンがトップシェアを握り、ノキアやブラックベリーの電話はもう見かけることはありません。重要な点は、ノキアは週に数台の新機種を導入していても、柔軟性がなく事業全体の方向を変えることができなかったこと。スピードだけでなく、柔軟性も必要なのです。

速度と柔軟性に続く3つめの要素は、スケーラビリティ(拡張性)。どれだけ速く、新たな立ち上げや、逆に規模の縮小ができるか。例として、アメリカ市場におけるトヨタを取り上げました。ベストセラーは「カムリ」でしたが、消費者ニーズは急速にSUVに移行。現在最も売れているトヨタのSUVは「RAV4」ですが、その移行は困難でした。トヨタだけでなく、大半の自動車メーカーはベストセラー車種のスケールダウンとSUVのスケールアップができなかったのです。

「この加速と減速をどれだけ速くできるかが重要」と指摘します。

最後に、両利きであること。現在の顧客からどれだけ多くを得るかという“Exploitation”(深化)と、新たな顧客をどれだけ探るかの“Exploration”(探求)です。

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流動性のある例・ない例

こうした流動性は、迅速な対応を可能にし、組織を行きたい方向に動かすことができますが、阻害するのは組織間の“壁”。製造とマーケティングは通常話し合う必要がなく、間に高い壁ができてしまいます。「しかし双方で、より深い会話ができれば、こうした壁がなくなり企業はより流動的になります」と指摘します。

次に、流動的ではないものを例示。プラハのトラム(路面電車)は電線が必要で、一路線しかなく、非常に固定化されています。一方、ニュージーランド航空の場合。カタール航空がマイアミに運航を開始すると、ニュージーランド航空の当初の現地スタッフは1人であったところ、ダラスと兼務の0.5人となりました。なぜもっと人が必要ではないのか。チェックインや貨物の受け取り、機内食、燃料サービスのすべてが外部に委託されています。そして、当日のスタッフや機長、副操縦士、フライトクルーは翌日に帰る。「簡単に言えば、ニュージーランド航空はほぼ7日で飛行を開始できる。これが流動的ということです」と言います。

こうした流動性のある企業は収益が高く、成長も速く、レジリエントであるという特徴があります。「コロナ禍でも生き残った企業はより流動性が高かった」と指摘。流動的な企業には戦略的思考と革新性があり、顧客満足度が高く、エンゲージメントの高い顧客を獲得していて、こうした顧客が高い収益をもたらしているのです。

次に、流動的でない4社として、GM、RCA、シアーズ、ノキアを例示。GMは、日産やホンダの高品質によって攻撃され、今ではトヨタがGMより多くの車を販売しています。RCAは米国で最大のテレビのブランドであったものが、ソニーの小型化技術に攻撃されて消滅。今度はソニーがサムスンやLGに攻撃されています。かつての世界最大の小売業者、シアーズは、すでに存在していません。ノキアもアップルに襲われて存在をなくしています。

「これら4つの企業に共通しているのは、流動的ではなく、方向を素早く変える能力を持っていなかったことです」と指摘します。
 
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成長スーパーサイクルと組織に流動性が必須な理由

成長のスーパーサイクル

次に、成長のスーパーサイクルについて。世界の成長率は、5~6%から今後7~10年で8~10%に伸びます。前回のグローバル成長スーパーサイクルは米、日、独の3か国で出現し、いずれも製造業にスケールがあり、驚異的な方法で成長したのです。ポストコロナの成長スーパーサイクルにおいては、節約率が爆発的で資産価格は高く、需要は供給を大きく上回って石炭などの基本的なものが不足。「ポストコロナの成長は流動性がもたらすと考えています」と言います。

OECDは、G7の中で成長する国は唯一、米国であると言っています。流動性指標であるビジネスのしやすさは成長と相関しており、次の成長スーパーサイクルでは流動性のある国がより速く成長していきます。企業も同様ですが、その流動性が現在最も打撃を受けているのは、地理的な流動性。顧客と物理的に会えない中でどう効率的に働くかという問題があります。

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流動性が必要な3つの理由

次に、「なぜ流動性なのか」について。最大の理由は、「我々は今ディスラプションの時代にあるから」とシャーマ教授。企業はより速く破壊されるようになってきています。S&P500社の平均年齢は、60年から12年に減りました。

2つめの理由は、スケール。ある日本の小規模企業は、非常に流動性が高く、製品や生産方法を素早く変更しています。規模が大きくなると、資産は増えても速度は遅くなる。より大規模な企業は、速度が遅くなって迅速に対応できなくなります。パナソニックなど日本の大手消費者向けブランドは、流動性の高いBtoCの領域には見られなくなってきています。ソニーの「PS5」は成功していますが、電話やPCは市場に浸透していません。一方、流動性がさほど求められないBtoBにおいて、支配的な日本企業の状態は今後も継続するでしょう。

3つめの理由は、専門化。顧客や機能の専門化が挙げられます。専門分化すると、速度と柔軟性が低下します。

ある国では、肉や魚などの約60%がスーパーで売られ、約40%がレストランを通じて売られていました。コロナ禍によって突然、全ての需要はスーパーに集中したのです。全てのサプライヤーとレストランは全ての需要が消えてしまった事態にどう対処していいかわかりませんでした。「彼らはスーパーのようにはなれなかったことが、私が説明しようとしていることです」とシャーマ教授。柔軟性があれば、需要のシフトに気づけたでしょう。

固定化した組織と流動的な組織

流動的な組織の理解のため、まず固定化した組織を見てみます。通常、垂直方向に顧客対応部門、水平方向に機能領域があります。新たな顧客領域が出現した場合には、垂直方向に新たな組織をつくります。新たな機能対応が必要となれば、水平方向に新たな組織がつくられます。

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この組織は、機能的な境界などの問題を抱えています。マーケティングの近くにはカスタマーサービスがありますが、通常は話し合うことはありません。顧客にも境界があり、それぞれの顧客領域ごとにスペシャリストがいますが、顧客領域間で話し合うこともありません。

階層的な境界もあります。自分のすぐ上か下の者としか話をせず、複数階層を上下することはしません。「科学的管理法」で知られたフレデリック・テイラーは「何をする必要があるかを決定し、それを行うだけ」と言っています。つまり、単なる労働とみなし、働いている人の洞察を活かせないわけです。これに対し、日本企業の凄さは“Kaizen”、継続的な改善活動が行われているところ。労働者が生産プロセスにインプットを提供できるのです。

最終的な企業間の境界において、日本ではサプライヤーが購入者と密接な関係を持っているため問題はより少なくなりますが、それ以外の世界では大きな問題となっています。そこで、いくつかの企業は“ガス状の組織”に転換し、共通目的に沿っている限りそれぞれがやりたいことができるようにしました。しかし、ガス状の組織にもディレクションが必要とされたために、うまく行かなかった企業もありました。

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流動性組織は、階層ではなくチームを組成します。中心にいるコーディネーターがコントロールし、それぞれのチームがタスクを実行します。「特にB to C の製品の場合はこうしたチーム体制が非常に重要」と言います。チームは、マーケティング、財務、製品設計などのメンバーで構成されます。

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流動的な組織の4つの要素

新規および既存ビジネスを検討するとします。あるチームは新規、あるビームは既存のビジネスに取り組みます。この組織構造の良さは、既存ビジネスがうまくいかない時、(新規ビジネスを一時的に棚上げして)もっとチームを投入できるところ。逆のケースもあります。一直線の機能的な責任を持っていないからです。「状況に応じて、コーディネーターがそれぞれの側に移動することがより興味深い」とシャーマ教授は言及します。

流動的な組織には、次の4つの要素があります。

1つめは、流動的なデリバリーと、その品質、スピード、革新性。
2つめは、レベルや機能、顧客のそれぞれの種別の間を素早く移動できる流動的な人材。
3つめは、柔軟性や拡張性のある流動的なインフラ。
4つめは、地理の流動性。顧客や従業員とコンタクトするのにどれがけ流動性があるかということです。

縦軸の新製品と既存製品、横軸の新規顧客と既存顧客によるアンゾフのマトリクスがあります。既存製品の既存顧客への販売は「市場浸透」、既存製品の新規顧客への販売は「新市場開拓」、既存顧客への新製品の販売は「新商品開発」、新規顧客に新製品を販売することは「多角化」です。流動性が低い場合は、市場浸透しかできません。逆に流動性が高ければ、新製品開発を通じてビジネスを成長させることができます。

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流動性を高めるための3つの“R”

「最後に、既存ビジネスから離れて、AmazonやGoogleのやっていることをしたければ、極めて高い流動性が必要」と指摘します。

流動性を高める、3つの“Re”

では、流動性を高めるにはどうすればよいのか。“Restructure”(再構築)、“Reskill”(再教育)“Rescale”(再拡張)が必要と言います。
“Restructure”は、機能、顧客、階層の境界を減らすこと。品質などの問題発生時における米国の単一スキルによる製造ラインと、日本の多能工による違いを説明しました。こうしたチームを製造だけでなく様々な現場に導入し、コスト削減などに繋げた例はたくさんあります。

このチーム構成は、境界を越え、自己管理し、スピードを上げ、最高の人材を集めて互いに学び合うことでゼネラリストになり、マネージャーはチーム統率に専念します。

機能的な境界を減らすためにも“Reskill”が必要で、ダイナミックな学習能力が注目されています。深いスキルを持つ“I型”に対し、柔軟性を持つには“T型”のスキルが必要。1つの領域の専門性とともに、隣接する領域にもアプローチするという能力です。マーケティングの人が営業やCSの専門知識を持つといったことです。最終的には、“拡張T型スキル”、つまりテクノロジーの使い方を知り、よりイノベーティブになることを考えます。

最後に、“Rescale”。自社と他社の境界をどう減らすか。どう階層的思考を減らし、戦略的な動きに繋げるかということです。これに成功している企業は、アウトソーシングやインソースを実践しています。ほかのプロの企業を探し、製品を提供させる。多くのゼネラリストを再雇用し、イノベーションの時間を確保する。顧客や競合他社に関する知識や知財を調達する一方、ほかのものは外部に委託する。そして、社員に対し、より高いレベルの思考に時間を使わせます。プロセスを改善し、革新的なソリューションを使って戦略を立案するのです。

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予算も既存ビジネスの運営からビジネスの成長やトランスフォーメーションにシフトさせます。

会社を流動的にしようとする時、従業員はエンゲージメントされないことになります。従業員の約15%は変化に焦点を当て、60%は変化を受け容れ、25%は変化に抵抗します。「日本企業の場合は変化への抵抗は少ないかもしれませんが、制度的な問題とならないよう対処が必要です」とシャーマ教授は指摘し、プレゼンテーションを終えました。

リーダーが変革を起こすための最良の方法

ここで、韮原は次のようにシャーマ教授に質問しました。

「日本企業は、以前は変化への適応が得意だったという指摘でした。しかし今、多くの企業幹部がマインドセットや能力をどう変えて、個人目標と戦略的な組織目標を整合させるか、といった組織と人財の変革が難しいと本カンファレンスで話しています。組織や人事部門のリーダーが変革を起こすための最良の方法は何でしょうか?」

これに対し、シャーマ教授は次のように回答しました。

「日・米・独が競合していた時、エレクトロニクス分野ではパナソニックとソニー、RCA、フィリップスの中でソニーが勝ちました。ソニーのスピードが速かっただけです。しかし、現在の競争においては、技術の劇的な進化により、スピードを上げる要件が劇的に変化しました。そのためには組織を変える必要がありますが、ソニーはそれに成功していません。『PS5』は最も成功した先端的な製品ですが、組織を整理、再編成する必要があります。2つめの問題として、平均年齢50歳の会社で競争しているとします。50歳は、学習意欲が低下した状態。Googleの平均年齢は32歳ですが、経験が少なく利用可能なあらゆるものを必死に探索している人と、常に境界をつくろうとしている人との違いは明白です。

したがって、最初にやらなければならないことが2つあります。まず、若い人を採用すること。次に、専門分化からゼネラリストにシフトすること。複数の分野で経験を積んだ人材の獲得です。最後に、従来の組織運営を捨て、若い組織を運営していくことです。

私がインドのスズキの工場に行った時のこと。人事制度もマーケティングも旧来的でしたが、インドで車を迅速に開発するために、次世代の要件を考える独立した若いチームが新たにつくられていました。うまい方法です。組織全体を何とかしようとするのではなく、小さい組織をつくるわけです。そして、自分はどれだけ流動性があるのかを自問しなければなりません」

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質疑応答

◎ダイナミックな学習を促進するための具体的な方法

次に韮原は視聴者からの「ダイナミックな学習を促進するための具体的な方法は?」との質問を取り上げました。

シャーマ教授は、「日本は幸運だと思います。従業員のエンゲージメントが非常に高いからです」と発言し、こう続けました。

「ダイナミックな学習は従業員毎に行われる必要があり、会社が学習するリソースを十分に提供するのではなく、学習志向のある従業員を支援することが効果的です。米国ではオンライン教育の導入が奨励されています。最も重要なのは、社外の学習志向の高い人材を探すこと。一生一つのことしかしていない人物はベストではありません。生物学や工学を学び、マーケティングの世界に来た人材ははるかに優れていると言えます。流動的で、何かのスペシャリストであり続けようとはしないからです。頭が良いだけでなく、丸みを帯びた経験のある賢い人材が必要なのです。1年休んで日本の端から端までトレッキングするような人は、良い候補者と言えるでしょう。なぜなら、学習志向を持っているからです。得てして人事ポリシーが一貫して一つのことを学びたい人に対してのものになっていますが、私はより多くのことを学ぶ人材を見つける必要があると提案しています」

◎心理的データ可視化の有用性

この回答を受け、韮原は次のようにさらに質問を行いました。

「トランスコスモスの幹部の方が、360度サーベイにおける直接的なフィードバックに当初は戸惑ったものの、自身を鼓舞し変化しようと努めた結果、スコアが年々改善したことを本カンファレンスで話して下さいました。部下と対話し、自己を変えようとする気持ちが重要と仰っていました。今、心理的安全性が経営哲学のパラダイムになっていて、エグゼクティブが社員の感情面を問題にするようになっています。私たちは、こうした360度サーベイや個人のパーソナリティ特性を明らかにするアセスメントを提供していますが、こうした心理的データの可視化は、変革を起こしていくのに有用でしょうか?」

シャーマ教授は、「絶対に有用です」と回答。「学習能力や意志は、フィードバックを得てまた戻って学習することで能力が伸びるからです。例えばビル・ゲイツは現代をリードする思想家です。彼は毎週1、2冊の本を読み、毎年1、2週間本を読む休暇を取っています。1995年にインターネットに関する予測について書き、マイクロソフトをインターネットの世界に進出させ、実際に変えていくことでインターネットの成長にも繋がりました。彼は3、4年前、次のディスラプションの脅威はパンデミックであると書きました。この予測も当たりましたが、彼の思考能力の高さを表しています。異なる領域から学び、新たなコンテキストに当てはめ、人々について学ぶことは、流動性にとって非常に重要なことです」

◎流動性はトップダウン

次に韮原は、参加者の「流動的な組織になるためには、人材に対してプロモーションしていく必要があると思いますが、合っていますか?」との質問を取り上げました。

「そのとおりです」とシャーマ教授。「流動性に関する大きな問題は、トップダウンのプロセスであること。非常に簡単なプロセスです。リーダーが流動性を信じていなければ、会社は流動的になりません。HRが知っていても、CEOが知らなければ流動性は起こりません。ボトムアップではないのです。ですから、そのコメントは絶対的に正しいです」と回答し、さらに続けました。

「流動的であることは、専門家にとってはストレスをもたらします。25年車の小さな部品を設計していたとして、ほかの部品を設計せよとなれば、ストレスをもたらします。こうした専門家からゼネラリストへのシフトは、組織内のストレスを起こします」

◎流動的な組織とフラットな組織の違い

韮原はもう一つ「流動的であることと、フラットな組織であることはどう違うのでしょうか?」との質問を取り上げました。

シャーマ教授は、流動性組織、アジャイル組織、フラットな組織の3つを示し、比較しました。流動性組織はすでに理解されているとして、アジャイル組織は(製品開発などの)デリバリーについてのみに焦点を当てて、人材やインフラなどは考慮していないもの。フラットな組織は、トップから最下層までのレベルの数が少ないことを指していますが、社員がどう組織化されるかには言及していません。階層の数を減らしても、なお階層的である場合があります。ヒエラルキーがあるのに階層だけは少ないという状態になりがちです。

「一方で、入社したばかりの人が運営するなど、階層的な境界を完全に破壊しているチームは興味深いです。入社したばかりの副社長がCEOにチームの成功のために何をすべきかを伝えるといったことが、流動性組織の目指すところです」と話しました。

◎B to Bに優位性がある日本

最後に韮原は「日本に住んでいると、高齢化社会で人口が減少して経済は停滞し、人々は日本が沈んで行っていると感じるようです。その日本について良いことも話されて嬉しく思いました。最後に日本の視聴者にメッセージをお願いします」と求めました。

これに対し、シャーマ教授は次のように話しました。

「日本はB to Bのビジネスでは優位性があると思います。ブランドが見えないから気づいていないかもしれません。高級車向けの黒の金属塗装ができるのは、ある日本の会社だけ。こうした例はたくさんあります。懸念されるのは、4、5社のB to C企業が牽引力を失っていること。組織のスピードが、消費者の嗜好の変化に追いついていないということだと思います。平面型テレビが登場した時、2つのできることがありました。LCDかプラズマを選択することです。日本企業はプラズマを選び、5000億円を失いました。これを機に、巨大なテレビメーカーが衰退したと思います。重要な点は非常にシンプル。もっと流動的であったならば、素早くLCDや有機ELに移行でき、市場を掴めたはず。それが本来あるべき姿です。良い例としては、ソニーの『PS5』の組織があります」

韮原が日本企業の流動性を高める支援に関わる意向を尋ねると、シャーマ教授は「喜んで」と応じ、本セッションを終えました。

(シャーマ教授によるアドバイザリやコンサルティングのご相談はHRDグループまでお問合せ頂ければ対応致します。)

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★登壇者の紹介★

マイアミ大学ハーバートビジネススクール副学長、マーケティング学部長
アルーン・シャーマ教授
Arun Sharma

グローバル市場のトレンド、市場構造、マーケティング戦略を主な研究領域としている。ビジネススクールでの教育・研究の傍ら、アクセンチュア、アメリカンエクスプレス、AT&T、アウディ、HP、IBM、マスターカード、ペイパル、P&G等、様々なグローバル企業への豊富なコンサルティング経験を有する。

 

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